自動車整備士の独立・開業|認証工場を持つまでの条件と準備

自動車整備士が独立して認証工場を持つまでの条件と準備を紹介する記事のアイキャッチ。小さな整備工場の作業場

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いつかは自分の工場を持ちたい。整備の仕事を続けるうちに、そう考えるようになった方も多いはずです。

結論から言うと、自動車整備士が独立して分解整備などを仕事にするには、国の「自動車特定整備事業の認証」が要ります。資格を持っているだけでは足りず、人と設備の条件をそろえる必要があるんです。

この記事では、独立までに準備することを3つの段階に分けて紹介します。

目次

自動車整備士の独立に「認証」が要る理由

先に結論

道路運送車両法では、自動車特定整備事業を経営する人は、事業場ごとに地方運輸局長の認証を受けなければならないとされています。独立の一番大きな関門は、この認証です。

『整備士の資格があれば、すぐ開業できるんじゃないの?』と思いますよね。ただ、法律が求めているのは「人ごとの免許」ではなく「事業ごとの認証」なんです。

特定整備には、エンジンやブレーキなどを外して行う「分解整備」と、カメラやレーダーに関わる「電子制御装置整備」の2つがあります。どちらを仕事にするかで、取る認証も変わります。

項目内容
認証の種類普通自動車・小型自動車・軽自動車の特定整備事業
認証を出す人地方運輸局長(申請は事業場を管轄する運輸支局など)
分解整備原動機・ブレーキ・かじ取り装置などを外して行う整備
電子制御装置整備前方を見るカメラやレーダーの取り外し・調整(エーミングなど)
認証なしで経営した場合50万円以下の罰金(道路運送車両法第109条)

特定整備の中身は自動車整備士の資格でできることでくわしく紹介しています。

独立までの準備を3段階でチェック

資格と経験、認証の条件、お金と取引先の順に固める

独立の準備は、いきなり物件探しから始めるより、3つの段階に分けて一つずつ固めるほうが抜けが出にくいです。

独立に向けて確かめたいことを、段階ごとにチェック表にしました。

段階確かめること相談先・調べ先
1. 資格と経験1級か2級を持っているか/整備主任者を任せられる人がいるか今の職場、整備振興会の講習
2. 認証の条件従業員の人数と整備士の割合/作業場と作業機械の基準事業場を管轄する運輸支局
3. お金と取引先土地・建物・機械にかかる費用/部品の仕入れ先とお客さんの見込み金融機関、税理士、地域の整備振興会
独立までの準備を、資格と経験・認証の条件・お金と取引先の3段階で示した図解

1段階目:資格と経験

分解整備をする事業場には、少なくとも1人、一級か二級の自動車整備士が必要です。原動機(エンジン)の分解整備をするなら、二級シャシだけでは条件を満たしません。

さらに、その人を「整備主任者」として、特定整備と記録簿の記載をまとめて管理させる決まりがあります。開業する本人が整備主任者になるなら、自分の資格がこの条件に合うかを最初に確かめておきましょう。

1級を目指す道は1級自動車整備士とは|試験の内容となるまでの道のりで紹介しています。

2段階目:認証の条件

人の条件は、道路運送車両法施行規則第57条で決まっています。ここが一人での独立を考えている人にとって一番の壁かもしれません。

認証工場の人の条件(分解整備の場合)
  • 特定整備に従事する従業員が2人以上いる
  • 少なくとも1人は一級か二級の自動車整備士である
  • 一級・二級・三級の整備士の数が、従業員の数を4で割った数(端数は切り上げ)以上ある
  • 事業場ごとに整備主任者を選んでいる

つまり、整備士が自分1人だけでは認証を受けられない、ということなんです。

設備は、車両置場や屋内作業場の広さ、天井の高さ、舗装された床、決められた作業機械などが求められます。具体的な広さや機械は施行規則の別表で決まっているので、図面を引く前に運輸支局に確かめてみてください。

3段階目:お金と取引先

土地や建物、リフトなどの機械にかかる費用は、場所や規模で大きく変わります。だいたいの金額を一つに決めることはできないので、見積もりを複数取って比べるのが現実的です。

お客さんをどう集めるかも、開業前に考えておきたい点です。今の職場で担当しているお客さんをどうするかは、トラブルにならないよう勤め先とよく話し合っておきましょう。

認証の申請はどう進める?

窓口は事業場を管轄する運輸支局

近畿運輸局の案内では、認証を取るには事業場を管轄する府県の運輸支局(兵庫は陸運部)に申請するとされています。

申請書には、氏名や事業の種類、事業場の所在地などを書き、基準に合っていることを示す書面を付けます。近畿運輸局の様式例には「自動車特定整備事業の認証新規申請書」や「整備主任者の届出書」、工員名簿などがあります。

認証を受けるまでの流れ
  1. 分解整備か電子制御装置整備か、仕事の範囲を決める
  2. 運輸支局で人と設備の基準を確かめる
  3. 整備主任者と従業員の体制を固める
  4. 作業場と作業機械を基準に合わせて整える
  5. 申請書と添付書類を運輸支局に出す
認証を受けるまでの5つの手順を、順番に並べた図解
欠格事由にも気をつけて

1年以上の拘禁刑の執行を終えてから2年を経過していない人や、認証を取り消されてから2年を経過していない人などは、認証を受けられません。

電子制御装置整備も行うなら、型式ごとの技術情報とエーミングの機器を手に入れられる体制も求められます。

その場合の整備主任者は、一級の整備士か、二級などの資格を持ち運輸支局長などの講習を修了した人です。これからの車を見据えるなら、早めに準備しておきたいところです。

認証工場と指定工場の違いも知っておく

独立を考えると「指定工場」という言葉も目にしますよね。指定工場は、認証を受けた事業場のうち、さらに設備や管理の体制、検査の設備などが基準に合い、自動車検査員を選んで検査させる工場です。

項目認証工場指定工場
前提事業場ごとに地方運輸局長の認証を受ける認証を受けたうえで、さらに指定を受ける
置く人整備主任者整備主任者に加えて自動車検査員
検査員の条件なし整備主任者として1年以上(一級は6月以上)の実務と、地方運輸局長の教習の修了など

開業したばかりの工場が、いきなり指定工場を目指すのはハードルが高めです。まずは認証工場として始め、体制が整ってから次を考える、という順番が現実的なんです。

検査員の条件は自動車検査員とはで紹介しています。

独立の前に勤め先で積んでおきたい経験

開業してから困らないように、勤めているうちに経験しておきたいことを挙げてみました。

  • 整備主任者として、特定整備と記録簿の管理を任される
  • 電子制御装置整備の作業や、エーミングに触れておく
  • お客さんへの見積もりや作業内容の説明を担当する
  • 部品の発注や在庫の管理を手伝う

どれも、開業すると自分で全部やることになる仕事です。今の職場で任せてもらえるなら、ぜひ手を挙げてみてください。

副業やフリーランスで整備をする時の注意

他人の車の特定整備を仕事にするなら認証が要る

自動車整備士の副業やフリーランスでも、他人の車の分解整備などを事業として行うなら認証が必要です。資格があるだけでは足りません。

『休みの日に、知り合いの車を少しだけ見てお礼をもらうのは?』という相談はとても多いですよね。気をつけたいのは、作業が特定整備に当たるかどうかと、仕事として続けているかどうかです。

働き方主な注意点
勤めながらの副業勤め先の就業規則で副業が認められているかを先に確かめる
出張での作業分解整備に当たる作業は、認証のない場所ではできない
フリーランスとして認証工場で働く契約の形と、整備主任者や工員名簿の扱いを工場と確かめる
自分の車の整備使用者として自分で点検・整備をする義務がある。特定整備をしたら記録簿に書く

例えば、こんなやりとりはよくありますよね。

「ブレーキの調子が悪いんだけど、週末に見てもらえない?」
「工場に持ってきてもらえれば、うちで見積もりを出すよ」

ブレーキのように分解整備に当たりそうな作業は、勤め先の認証工場で受けるのが安全です。自分の副業として受けてしまうと、あとで困るのは自分なんです。

どの作業が特定整備に当たるかは、道路運送車両法施行規則で細かく決まっています。迷う作業があれば、事前に運輸支局に問い合わせておくと安心です。

開業の時期を待つ間の選択肢

副業で小さく始めたい気持ちがあるなら、まずは認証工場に勤めながら、工場の運営に関わる仕事を増やしていく道もあります。経験を積むことが、そのまま開業の準備になります。

自動車整備士の独立についてよくある相談

この章について

質問サイトでよく見かける相談を、内容を要約して紹介します。

相談1「独立して工場を開くのは大変?どうやって開くの?」

整備士として独立して工場を開くまでの道のりを知りたい、という相談です。

開業の手順は、人と設備をそろえて運輸支局に認証を申請する流れです。大変なのは、整備士を含む2人以上の体制を作ることと、基準に合う作業場を用意することです。

まずは運輸支局で基準を聞き、自分の場合に何が足りないかを書き出すところから始めてみてください。

『初期費用がとんでもなくかかるって聞いたけど…』と不安になる方もいます。費用は土地を買うか借りるか、居抜きの工場を使えるかなどで大きく変わります。ネットで見た金額をうのみにせず、自分の条件で見積もりを取ってみるのが確実です。

相談2「休日に自宅で簡単なパーツ交換を格安でやる副業はできる?」

整備士の資格を取ったら、休日に自宅でオイル交換やパーツ交換を仕事として受けられるのか、という相談です。

分解整備に当たる作業を、認証を受けずに事業として行うことはできません。作業がどれに当たるかを運輸支局で確かめ、勤め先の就業規則も見ておきましょう。

相談3「2級を持っていると、別の工場との掛け持ちを頼まれた」

ディーラーで働く2級整備士が、知り合いの工場から資格を貸してほしい、掛け持ちしてほしいと頼まれた、という相談です。

整備主任者は、他の事業場の整備主任者を兼ねることができない決まりです。名前だけを貸すような頼みは、引き受ける前に一度立ち止まって考えてみてください。

独立はいきなりではなく、資格と経験を積み、条件がそろってから進める人が多いです。その間に、整備主任者を経験できる職場や、資格の取得を支えてくれる職場に移るのも一つの手です。

整備士の求人を比べてみると、経験を積む場所の選択肢が広がります。

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よくある質問

自動車整備士が独立するのに必要な資格は?

分解整備をする事業場では、少なくとも1人の一級か二級の自動車整備士が必要です。そのうえで、事業場ごとに地方運輸局長の認証を受けます。

整備士が1人だけでも独立できますか?

認証の条件では、特定整備に従事する従業員が2人以上必要です。整備士の数も従業員数を4で割った数以上が求められるので、体制づくりから考える必要があります。

自動車整備士の副業は認められていますか?

副業ができるかどうかは勤め先の就業規則によります。他人の車の分解整備などを事業として行うなら、別に認証が必要です。

独立するなら指定工場を目指すべきですか?

指定工場は、認証を受けたうえでさらに設備や検査員などの基準を満たした工場です。開業してすぐに目指すのはハードルが高いので、まず認証工場として体制を整えるのが一般的な順番です。

フリーランスの自動車整備士として働けますか?

認証工場と契約して働く形も考えられますが、契約の形や工員名簿の扱いは工場ごとに確かめが必要です。自分で事業として特定整備を行うなら、認証を受ける必要があります。

まとめ

この記事の要点
  • 独立して特定整備を仕事にするには、事業場ごとの認証が要る
  • 人の条件は従業員2人以上、一級か二級が1人以上、整備士が従業員の4分の1以上
  • 準備は資格と経験、認証の条件、お金と取引先の3段階で固める
  • 申請の窓口は事業場を管轄する運輸支局
  • 副業やフリーランスでも、他人の車の特定整備を事業にするなら認証が必要
自動車整備士ガイド

自動車整備士ガイド 編集部

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